【OEMとは?】ビジネスモデルのメリット・デメリットを解説|ODM、PBとの違い!

2024.02.17

製品の品質向上とコスト削減に苦慮している企業は少なくありません。OEM委託を利用すれば、問題解決できる可能性があります。

この記事ではOEMの基本やODM・PBとの違い、OEM委託を成功させるためのポイントなどをわかりやすく解説します。記事を読めば、OEM委託を活用したビジネス戦略の理解が深まります。

OEMとは

OEMとは「Original Equipment Manufacturing」の略です。ある会社が別の会社のブランド名で製品を作ることを指します。製品を発注する会社は自社ブランドで商品を販売しますが、製造業務を外部に委託することでリソースに余裕ができるため、より重要な業務に専念できます。

OEMの仕組みはコストを削減したり、専門知識を活かした高品質な商品を素早く市場に出したりする際に有効です。

OEM提供企業は製品の設計から製造までのプロセスを担い、発注企業はマーケティングやブランド管理を担います。発注企業は自社のニーズに適した品質や機能を要求し、OEM提供企業はそれに応じて製品を製造します。OEMのビジネスモデルはビジネス拡大や素早い市場対応、専門性を追求することに貢献します。

OEMの歴史と発展

OEMの歴史は20世紀初頭にさかのぼります。当初は自動車産業における部品供給の形で誕生しました。第二次世界大戦後、製造業の急速な発展に伴い、OEMの概念も幅広く展開し、家電や電子産業にも影響を与えました。

1970年代から1980年代にかけて、日本のメーカーが製造技術を駆使し、世界市場におけるOEM供給の先駆者となります。1990年代に入ると、経済発展を遂げた中国が「世界の工場」として認知され、OEM市場のさらなる拡大をもたらしました。

21世紀に入り、インターネット技術の発展がビジネスの世界的な連携を促し、OEMビジネスモデルは新たな段階へ進化しました。最近では、スマートフォンやIT機器の高機能化に伴って高品質な製品への需要が増しています。

環境への配慮がビジネスにおける重要な要素となる中、持続可能な生産プロセスを取り入れたOEMが注目されています。テクノロジーの進化(3Dプリンティングなど)が、OEMに新たなビジネスチャンスを提供。アナログからデジタルへの変革はOEM関係の透明性を高め、協力と革新を促すことに繋がっています。

歴史的背景は、OEMが現代の産業構造においてどのように重要な役割を果たしているかを理解するのに役立ちます。

OEM、ODM、PBの違い

OEM、ODM、PBは、製品開発や生産におけるビジネスモデルです。製造業界で広く使用され、製品を市場に提供する上で重要な役割を果たしています。それぞれの違いは以下のとおりです。

  • OEM:他社のブランド名で製品を生産する、発注企業が製品を設計し、製造業者に生産を依頼
  • ODM:製品の設計から製造までを担う、製造業者のデザインと技術を用いて製品が作られる
  • PB:小売業者が自社ブランド名で販売する製品を指し、OEMやODMに生産を依頼するケースが多い

上記のビジネスモデルを選択することはブランド価値の構築や製品の品質管理、市場戦略に大きく影響を及ぼすため、企業にとって非常に重要な意思決定です。

OEMとODMの違い

OEMとODMはどちらも製品を生産する方法です。しかし、OEMは発注企業が提供した設計やブランド名に基づいて製品を生産することを指し、製品の設計や研究開発は発注企業が担います。OEM提供企業は発注企業の指示に従って生産を行います。

一方ODM(Original Design Manufacturing)は、製品の設計から製造までを製造業者が一括りで引き受けるサービスのことです。ODMでは製造業者が独自の設計能力を持ち、発注企業は製品のカスタマイズやブランド化に関与します。
» ODMを詳しく解説

OEMは製品開発を発注企業が主導し、製造は外部の業者に委託するビジネスモデル。ODMは、製造業者が設計と生産の双方を提供し、発注企業は完成品の販売のみを行うビジネスモデルです。OEMの場合は製造業者が生産技術に、ODMの場合は設計と製造の両方の強みに注目し活用できます。

要するに、OEMは「製造は任せるが、デザインは自社で」という関係であり、ODMは「デザインから製造まで一任する」という関係です。 OEMとODMの違いを理解することは、ビジネス上で正しい選択を行うために重要です。

OEMとPB(プライベートブランド)の関係性

OEMとPBの関係性は非常に密接です。OEMは、他社のブランド名で製品を製造するビジネスモデルのこと。小売業者や流通業者が自社ブランド(プライベートブランド=PB)の製品を市場に提供する際に、OEM提供企業に製造を委託します。

OEMとPBの協力関係により、PB製品を販売する企業は初期投資の抑制と生産リスクの軽減を図ることが可能です。一方OEM提供企業にとってはPB製品の製造が安定した収益源となり、生産量を増やす助けになります。

PB製品の品質と差別化を支えるのはOEM提供企業の専門性なので、両者の関係は相互依存的なものと言えます。新製品の開発では、OEM提供企業は速やかな市場投入とコスト効率の良さで、PBブランドを強力にサポートします。

OEMとPBは互いの利点を活かしながら共に成長する関係です。ビジネスの世界では、このようなパートナーシップが製品の質を高め、ブランドイメージを向上させることに繋がります。

OEMの種類と特徴

OEMには以下のような種類があり、それぞれ異なる特徴を持っています。

  • 純粋OEM
  • 独立型OEM

純粋OEMとは

純粋OEMとは、発注企業が提供する完全な製品設計に基づいて製造を行うサービスです。OEM提供企業は発注企業から提供された設計図に従って製品を生産しますが、製品にOEM提供企業の名前は表記されません。

完成した製品には、発注企業のブランド名が付けられます。純粋OEMでは、発注企業が製品開発に伴うリスクを負い、研究開発にかかる費用も支払います。製品の品質や仕様の管理も、発注企業の責任範囲内です。

独立型OEMとは

独立型OEMは、他社が設計した製品を専門的に製造するサービスです。具体的には、元請け企業が作成した設計図面に基づいて製品を生産します。自社ブランドを持たず、製品開発にも関与しないのが特徴で、注文した企業のブランド名で製品を提供します。

設計や開発は元請け企業が手掛け、独立型OEM提供企業は製造のみを専門とします。独立型OEMは一般的なOEM業者と比べると柔軟性にかけると指摘されますが、製造の専門性は高いです。元請け企業との関係性が密接であり、通常のOEM提供企業より依存度が高い傾向にあります。

OEM委託のメリット

OEM委託は事業を成長させるために有効な手段です。OEM委託には以下のようなメリットがあります。

  • コスト削減と効率化
  • 市場への迅速な対応が可能
  • 資源の集中と専門性の強化

他にもリスク分散による事業の安定性の向上や、パートナーシップによる新技術へのアクセスなど、事業を強化する機会が生まれます。世界市場への進出もOEM委託によるメリットの一つです。世界中のメーカーとの連携により、商品の国際的な展開が可能となり、新たな販売チャンスを得られます。

コスト削減と効率化

事業を行う上で、コスト削減と効率化は重要な要素です。OEM委託を活用することで製品を自社で一から製造する必要がなくなるため、製造コストが削減できます

OEM委託は、大量生産の際に単価を大幅に下げられることがメリットの一つです。自社の生産設備や人材を持つ必要がないため、固定費の削減ができます。

企業はOEM委託をすることで、資金を他の分野に有効活用することが可能。新しい市場への投資や、研究開発へ注力することもできます。OEM委託は変動費用の最適化にも役立ち、生産量に応じたコスト調整が可能です。

需要が変動する商品でも、効果的な経営ができます。時間に余裕がない場面でも、製品開発から生産までの期間を短縮し、市場への素早い対応が可能です。製品の製造プロセスを外部に委託することで管理の負担が軽減され、効率的な事業運営が実現できます。

OEM委託は企業にとって、コスト削減と効率化を実現する強力な手段です。

市場への迅速な対応が可能

市場への素早い対応は、事業を成長させるために重要な要素です。マーケットニーズが絶えず変化する今日のビジネス環境では、素早く市場の要求に応えられる企業が競争に勝ち残れます。

新規市場への参入時間を短くすることは、ブランドの認知度を高めるだけでなく、先行者利益を得られる可能性が高くなります。さらに地域に特化した商品を展開しやすくなることで、各市場の消費者ニーズに合わせたカスタマイズが可能に。

消費者の満足度が上がり、リピート購入の可能性が高まります。既存市場での事業拡大も、素早いマーケット対応の効果で、新しい顧客層を開拓するチャンスを増やせます。

製造工程にかかる時間の短縮は、商品をより速く市場に投入することを可能にし、競争優位を確保することに役立ちます。事業の成長と市場拡大のために、市場への素早い対応を継続することが大切です。

資源の集中と専門性の強化

資源の集中と専門性の強化は、企業の競争力を高めるために重要です。企業が主要な資源を重要な業務に専念させることで、事業を効率的に展開できます。

特定の業務を外部に委託し、生産プロセスを簡素化することで、企業は研究開発やマーケティングのような他の分野への投資を増やすことが可能です。専門的な分野での競争力を強化し、市場での優位性を確立できます

限られた資源を最適化することで無駄なコストを削減し、事業の効率を上げることが可能です。資源を上手く集中管理することで組織の柔軟性が上がり、市場の変化に迅速に対応する能力が強化できます。変動が激しい現代のビジネス環境においても、企業は持続可能な成長を遂げることが期待できます。

OEM委託のデメリット

OEM委託には多くのメリットがありますが、一方で理解しておくべきリスクも存在します。以下をチェックしましょう。

  • 品質管理の課題
  • 依存関係の形成とその影響

発注企業側の製造技術や開発能力の低下も懸念材料です。OEM委託先とのコミュニケーションコストがかかり、意思疎通に時間が必要になるデメリットもあります。市場の変化への対応能力が低下することも問題の一つです。

上記のようなリスクを理解してOEM委託を行うことで、予期せぬ問題に対する対策を事前に準備でき、ビジネスを安定的に展開できます。

品質管理の課題

品質管理はOEM委託の大きな課題です。異なる生産基準やコミュニケーションの障壁は、製品の品質に不一致を生じさせる原因になります。OEM提供企業と明確な仕様を共有していないと、意図しない製品が作られてしまうことがあります。

製品の安全性や規制遵守は、企業にとって避けられない問題です。安全性や規制の基準を満たしていないと、企業の信頼性に大きな打撃を受ける可能性があるからです。品質監査や検査も重要です。しかし、遠隔地で生産されることが多いOEM製品では、品質監査や検査を十分に行うことが困難な場合もあります。

品質問題はブランドイメージの低下に直結するため、継続的な品質向上への取り組みは欠かせません。品質コントロールが不十分な場合、リコールや返品などによるコストと時間が増大し、企業の利益を損なうことにつながります。

上記の課題は、第三者製造者の品質管理体制への依存度が高いOEMにおいて特に顕著です。品質管理の問題に対処するためには、十分なコミュニケーションや厳格な監査体制、継続的な改善への意識を持つことが重要です。

依存関係の形成とその影響

依存関係の形成は、企業間での協力関係においてしばしば見られる現象です。特にOEM委託では、依存関係が強まることにより、いくつかの影響が起こる可能性があります。企業が製造を外部に委託することで、製造元への依存度が増加し、長期的な供給が不安定になるリスクもあります。

委託先が予期せぬ事態に陥ると、発注企業自体の事業運営に影響が出ることも。コア技術や製造ノウハウが流出する懸念もあります。OEM提供企業との関係が深まるにつれて、その企業の経営状況やビジネス方針の変更が発注企業の事業戦略に影響を及ぼす可能性もあります。

上記の状況は、交渉時の力関係が不均衡になると、条件変更時に発注企業が不利な立場に立たされやすくなることを意味します。

オリジナリティの低下はブランド価値を損なう原因になることも。同じOEM提供企業が競合他社にも同様のサービスを提供することで、市場競争がより激しくなることも避けられません。

企業がOEM委託を導入する際は十分に検討し、適切なリスク管理を行うことが重要です。優良なパートナーを選ぶことや契約時の注意点を十分に理解することが、リクスを最小限に抑えるために役立ちます。

OEM委託を検討する際の注意点

OEM委託を検討する際に重要なポイントは以下の2つです。

  • 適切なパートナーを選ぶ
  • 契約時のポイントを押さえる

適切なパートナーを選ぶ

適切なパートナー(OEM提供企業)を選ぶことは、OEM委託を成功させるために重要です。パートナー選びの際には、複数の要素を慎重に検討する必要があります。以下のポイントを押さえましょう。

  • 過去の実績と評判を調査
  • パートナーの専門分野と技術力を検証
  • コミュニケーション能力と対応の迅速さを評価
  • コストと品質のバランスを検討
  • 柔軟性とカスタマイズオプションを確認
  • リスク管理と問題解決能力を重視
  • 長期的な関係構築が可能か検討
  • 納期の厳守と生産能力を確認
  • 保証、アフターサービス、サポート体制を評価
  • 契約前にNDA(秘密保持契約)の締結を検討
  • 貿易法規や規制に精通しているか確認
  • サステナビリティと倫理的な生産基準に配慮
  • パートナーの企業文化とビジョンの適合性を考慮
  • 企業文化やビジョンが自社と合致しているかを確認

OEM提供企業の実績や信頼性を確認し、高い品質基準を維持できるか見極める必要があります。スムーズなコミュニケーションと透明性のある交渉が大切です。

OEM提供企業と長期的な関係を構築するには、取引条件の設定が重要。知的財産権の管理と保護については、合意前に明確なルールを設けるべきです。サプライチェーンの安定性やリスク管理、費用対効果を考慮した価格交渉が必要です。

市場動向への適応能力や消費者ニーズへの対応も、パートナー選びにおいては大きな要素です。競合との関係や市場での独自性の維持についても、考慮する必要があります。

生産量や将来的な事業の拡張性の検討、トラブル発生時の管理体制や対応計画を確認することは非常に重要。環境基準や社会的責任を果たす姿勢は、グローバルなビジネスにおいて重要な要素です。パートナーとして良い関係を継続するためには、定期的な見直しと改善のプロセスが不可欠です。

上記のポイントを踏まえ、適切なパートナーを選定することで、OEM委託による事業の拡大が期待できます。

契約時のポイントを押さえる

契約時のポイントを押さえることは、OEM委託において重要です。契約は相互の権利と義務をはっきりさせ、トラブルを防止するための土台になります。適切な契約はスムーズな取引を可能にし、長期的な関係の構築に役立ちます。

契約内容には納期や価格、数量などの基本条項の他に、品質保証やアフターサービスの詳細も含まれます。独占契約の有無や知的財産権の取り決めはビジネスに大きな影響を与えるため、特に慎重な検討が必要です。

トラブルが発生した場合に備え、違約金や解約条件を契約書に記載することも大切です。これにより公平な条件が保たれます。機密保持や監査権を確保することは、互いの信頼関係を築く上で欠かせない要素です。

上記の契約時のポイントをきちんと理解し適切に盛り込むことで、OEM委託のリスクを最小限に抑え、より良いビジネス関係を構築できます。

まとめ

OEMを理解し活用方法について検討することは、ビジネスに大きなメリットをもたらす可能性があります。OEMを活用することで、コスト削減や市場への迅速な対応、専門性の強化などの利点を得られます。

ただし、品質管理の課題や依存関係の形成などのリスクもあります。OEM委託を行う際には、優良なパートナー選定と契約条件の精査が必要です。適切な知識と準備を整えた上でOEMを利用することで、ビジネスの成長に繋げられます。
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記事の監修者

EC-Consulting Japan株式会社 代表取締役社長

松下 直人

松下 直人

会社員時代に個人輸入した商品をネットで売ったことがきっかけで、EC事業に目覚める。
その後輸入から販売までのフローを組織化し、EC-Consulting Japan株式会社を創業。
現在は自社で複数のネットショップを運営しながら、自信の経験と自社の成功&失敗事例を元に、副業の個人から中小零細企業まで幅広くサポートしている。

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